Watch LIFE NEWS編集部・副編集長、佐藤が、BASELWORLD(バーゼルワールド)2019を現地取材。各ブランドから発表された新作の魅力をレポートします。
革新の“ゼニスオシレーター”搭載機が量産化して登場
2017年秋。17世紀にクリスティアーン・ホイヘンスが発明した“テンプ用ヒゲゼンマイ以来の大発明!”と大きな話題を呼んだ新型オシレーター(脱進・調速機)と、それを搭載したデファイ ラボ。
その実態とは、17世紀にクリスティアーン・ホイヘンスが発明した機械式時計の原理として、現在に至るまですべての機械式時計の根幹を成しているテンプ用ヒゲゼンマイに代わり、ヒゲゼンマイとテンワ、アンクルと緩急針の機能すべてが単結晶シリコンで作られた一体構造の単体として設計された、新しい脱進・調速機構を載せた機械式腕時計であった。
この新型オシレーターは一体構造の単体として作られている、つまりは機械的に連結していないため、接触、摩擦、磨耗とは無縁であり、注油が不要。さらに温度変化や重力の影響を受けにくく、磁気にも干渉されにくいという特性を持ち、並外れた周波数で振動することで平均日差0.3秒という驚異的な精度を実現。
さらにはパワーリザーブの95%で同じ精度を維持、しかも約60時間のパワーリザーブを備えるという、まさに革新的な新しい脱進・調速機構であった。そんな優れた新型オシレーターを搭載したデファイ ラボの初期ロットはそれぞれ異なる10モデルが作られたが、すべてコレクターに販売され、その後、一般の人が新たに手にできる機会はなかった。(デファイ ラボはすでに完売しているので、購入不可)
そんな時計愛好家垂涎のモデルとなったデファイ ラボの量産モデルとなるのが、新作として発表された注目モデル“デファイ インベンター”である。
新作“デファイ インベンター”は振動数と外装素材が違う!
デファイ インベンターが搭載する自動巻きCal.9100。このムーヴメントに採用されるのは、17年のデファイ ラボ以来となる“ゼニスオシレーター”だ。従来の一般的な機械式ムーヴメントの調整機構における30個ほどの部品を、たった一個の薄い部品(0.5㎜)に置き換えるという構造、そして、単一結晶シリコン製で時計業界では初めて柔軟性のあるブレードの脱進歯車を使用するという構造は、デファイ ラボと同じ。
また、耐磁性(ISO-764)、熱衝撃耐性 (ISO-3159)がISO規格に準拠した優れた品質であることも同じだが、計時精度についてはデファイ ラボがブザンソン天文台のクロノメーター認定だったのに対し、デファイ インベンターではTIME LAB(ジュネーブ時計精密工学ラボラトリー)クロノメーター認定となっている点が異なる。そして、何より異なるのは振動数だ。デファイ ラボも10万8000振動/時(15ヘルツ)と驚異的な振動数であったが、デファイ インベンターでは12万9600振動/時(18ヘルツ)とさらなる高振動化を実現。理論上、その精度はデファイ ラボを上回るはずだ。
また、デファイ インベンターとデファイ ラボでは外装素材も異なる。デファイ ラボでは、アルミニウムと特殊なポリマーで構成され、チタンの2.7倍、アルミニウムの1.7倍、そしてカーボンファイバーより10%軽量なハイブリッド新素材“アエロナイト(非合金)”を採用したが、デファイ インベンターでは、ケースにはチタンを採用。
一方、ベゼルにはアエロナイトを採用した。アエロナイトは、世界で最も軽量のアルミニウム合成素材で、ゼニスの独占的ハイテク技術により開発されたもの。チタンよりも3倍も軽く、アルミニウム気泡をポリマーで固体化させた素材で、外観上の独特のアクセントにもなっている。
ムーヴメントの特記事項
ムーヴメントのサイズ:32.8㎜/ムーヴメントの高さ:8.13㎜/部品数:148/石数:18/パワーリザーブ:少なくとも50時間/仕上げ:コート・ド・ジュネーブ装飾を施したローター
ケース、文字盤、針の特記事項
ケース厚:14.5㎜/風防:両面無反射コーティングのドーム型サファイアクリスタル/裏ブタ:サファイアクリスタル/文字盤:ブルーのオープンワークデザイン/アワーマーカー&針:ロジウムプレート、ファセット、スーパールミノバ®SLNコーティング C1
ベルトとバックル
ブラックラバー、ブルーアリゲーターレザーコーティング/チタン製ダブルフォールディングクラスプ
ほかにも気になる新作が目白押しとなったゼニス。駆け足になってしまうが、ほかの新作についても紹介していこう。
デファイ エル・プリメロ 21 カーボン
こちらは2017年に発表された人気のデファイ エル・プリメロ 21コレクションの新バリエーション。18年にブレス仕様とゴールドモデルが追加され、今年はカーボンファイバーケースモデルがラインナップに加わった。
カーボンファイバーは軽量で耐久性に優れたハイテク素材。幾重にもランダムに重なったカーボンファイバーの層が光を反射してユニークな効果を生み出すほか、ひとつ一つのケースが異なる模様を持つ。また、本作ではケースとベゼルだけでなく、リューズとクロノグラフのプッシュボタン、そしてベルトのバックルにもカーボンファイバーを採用しているところも見逃せないポイントだろう。ベルトはブラックのラバーにレザーを合わせたベルトのほかに、特製ラバーベルトも付属する。
搭載されるのは、これまでと同様、Cal.9004。Cal.9004は、従来のクロノグラフムーヴメントとはまったく異なり、時刻専用のメカニズムとクロノグラフ専用のメカニズムの両方を搭載している。ひとつの動力ゼンマイで時刻とクロノグラフの両方を補おうとすると、精度やパワーリザーブに影響を与えるため、Cal.9004では時刻専用、クロノグラフ専用の2個の動力ゼンマイが搭載されており、精度に影響がないように設計されている。
加えて、それぞれの機構は振動数が異なり、時刻表示用機構は3万6000振動/時(5ヘルツ)であるの対し、クロノグラフ用機構は36万000振動/時(50ヘルツ)という高速振動実現。これにより、センターのクロノグラフ針は1秒で文字盤を1周し、正確に100分の1秒を計測することができる。
エル・プリメロ A386 リバイバル
今年はエル・プリメロの誕生から50周年という節目の年。現地での撮影は叶わなかったが、注目の新作としてはエル・プリメロ A386 リバイバルの存在も見逃せない。
エル・プリメロ A386 リバイバルは、エル・プリメロが誕生した1969年製の初期モデルのなかでも“A386”を忠実に再現したモデルとなっている。しかも“忠実”具合が半端ではない。
このアニバーサリーエディションでは、素材こそゴールドだが、38㎜のケースにドーム型のクリスタル風防、3色のインダイアル、タキメーター目盛り、針とインデックスのフォルム、さらにはマッシュルーム型のプッシュボタンやラグもオリジナルモデルと同じ。オリジナルモデルのディテールを再現するため“リバースエンジニアリング”の技術を用い、オリジナルのエル・プリメロ クロノグラフのすべての部品が確な再現ができるようデジタル化されたという。
デザイン上での変更点はただ二つのみ。オリジナルがフルケースバックだったのに対し、本作ではムーヴメントが見えるようにシースルバックを採用したことと、リューズのロゴが新しくなったこと。それ以外には、まさにオリジナルが忠実に再現された。 なお、搭載されるムーヴメントはエル・プリメロのオリジナルをアップデートしたCal.EL Primero 400が採用されている。
18KWG、18KYG、18KRGの3モデルが展開されるが、それぞれ50周年に合わせて限定数は各50本。また、ユニークなのが保証期間である。これも50周年とかけて、なんと50年もの保証が付けられている。
さて、今回のレポートはデファイ インベンター中心の紹介となったが、ほかにも魅力的なコレクションがいくつか見られた。それらについての紹介は、また別の機会にお届けしたい。
文◎佐藤杏輔(編集部)/写真◎水橋崇行(現地取材)
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