長く日本国内に正規代理店がなかったことから一般の認知度はそれほど高くないチューダーだが、一方で同ブランドを支持する時計好きは結構多い。そこで、今回はチューダーの人気3モデルを取り上げ、時計好きに支持されるポイントを探っていきたい。
注目モデル01 ブラックベイGMT
人気No.1のチューダー版ペプシ
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Ref.79830RB。SS(41㎜径)。200m防水。自動巻き(Cal.MT5652)。国内定価38万5000円
現在、チューダーで最も人気のあるモデルが“ブラックベイGMT”だ。人気の理由は、ずばり青×赤の2色ベゼル、通称ペプシベゼルを備えている点である。
このペプシベゼル、実はロレックスのGMTマスターが元祖で、1955年に発表された初代モデルから歴代モデルに採用されてきた、言わばシンボルカラーなのである。GMTマスター ペプシベゼルの人気ぶりはいまもってすさまじく、現在、正規販売店での入手は極めて困難な状況。そのため約95万円の国内定価に対して、並行輸入市場では約220万円以上の値が付けられて流通しているから驚きだ。
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ロレックスのGMTマスター2。ブラックベイGMTのベゼルの配色は、正確にはマットブルーとバーガンディカラーでGMTマスター2よりも渋い雰囲気だ
これに対し、チューダーのブラックベイGMTの定価は約41万円とお値打ち感がある。現実的な価格で購入できるブラックベイGMTに人気が集まっているというわけである。
注目モデル02 ブラックベイ フィフティーエイト
話題作の陰に隠れた実力機
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Ref.79030N。SS(39㎜径)。200m防水。自動巻き(Cal.MT5402)。国内定価35万1500円
2018年の新作でひと際大きな話題をさらったブラックベイGMT。当時はこの陰に隠れてあまり目立たなかったが、じわじわと人気を集め、いまやGMT同様に高い人気を集めているのが、“ブラックベイ フィフティーエイト”だ。従来のブラックベイとの1番の違いはサイズで、2㎜小さくなった39㎜径のケースを採用。この絶妙なサイズ感が好評を博したのだ。
加えてベゼルのカラーリングにも注目してもらいたい。60分目盛りにゴールドカラーをあしらいアンティーク感を強調するとともに、三角マーカーにレッドカラーという、往年の本家サブマリーナを彷彿とさせる意匠を取り入れているのだ。このディテールがアンティークファンの心を鷲掴みにした。
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フィフティーエイトは単にブラックベイの小型版というだけでなく、よりアンティークテイストを強めたデザインも大きな魅力となっている。象徴的なディテールがリューズとベゼルトップのカラーリングで、往年のサブマリーナを彷彿とさせる仕上がりとなっている
注目モデル03 ブラックベイ クロノ
ムーヴメントも話題となったクロノグラフ
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Ref.79350。SS(41㎜径)。200m防水。自動巻き(Cal.MT5813)。国内定価54万900円
ブライトリングとパートナーシップを結び、同社のCal.01をベースに完成させた、念願の自社製自動巻きクロノグラフムーヴメント、MT5813を搭載したことでも大きな話題を集めたブラックベイ クロノ(2017年初出)。
信頼性の高いムーヴメントもさることながら、溝が切られた二つのネジ込み式プッシャーにサテン仕上げのタキメーターベゼルなど、アンティークで人気の手巻きデイトナを彷彿とさせる雰囲気も本作の大きな魅力だ。そして何より注目なのが価格。ブライトリングの01搭載モデルが80万円以上するのに対して、ブラックベイ クロノは約54万円とかなりお買い得なのである。
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コラムホイールや垂直クラッチ式など基本メカニズムは01を踏襲する一方、独自のシリコン製ヒゲゼンマイを採用するCal.MT5813。さらにほかの自社製ムーヴメント同様、パワーリザーブも約70時間を実現している(写真◎TUDOR)
付け加えると、ここで取り上げた3モデルに共通するのが、COSCクロノメーター認定を取得した自社製ムーヴメント搭載機であること。そして200m防水や70時間パワーリザーブなど普段使いにうってつけな実用スペックを備えることだ。ロレックスのディフュージョンブランドというポジションにふさわしい実用時計であると同時に、価格はいたって良心的なのである。
チューダーの時計のコストパフォーマンスの高さは同価格帯のモデルと比較しても際立っていると言えるだろう。
こうしたコストパフォーマンスの高さに加え、秀逸なデザイン性が時計好きに支持される大きな理由なのだ。
文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修