記念すべき第1弾〝コンプレダイバー1960〟モチーフとなった60年代の傑作とは何か
防水時計の発展に寄与した防水ケースの存在
今回から1月11日に発売した記念すべき第1弾〝コンプレダイバー1960〟について、その開発裏話を数回にわたって紹介させせていただきます。そしてその1回目は、そもそもコンプレダイバー1960のモチーフとなったのはどんな時計なのかついてお話ししたい。
アンティークがお好きな方はご存じと思いますが、このモデルのモチーフとなったのは1960年代に登場した通称コンプレッサーダイバーと呼ばれるダイバーズウオッチです。実は本格的なダイバーズウオッチが登場するのは50年代になってから。当時は優れた工作機械などないためすべて手作業。50m防水といえども簡単ではなかったのです。そんななか生まれた代表的なダイバーズウオッチがロレックスのサブマリーナです。
同時期にオメガとブランパンからも、それぞれシーマスター300とフィフティファゾムスが発表されていますが、当時独自に開発できたのは、これらほんの一部のメーカーにすぎなかったのです。それが50年代後半になると、このダイバーズウオッチが各社から続々と登場するようにななります。その背景にあったのがコンプレッサーケースの存在だったのです。
写真はEPSA社製のスーパーコンプレッサーケースの裏ブタの内側。ヘルメットを被ったダイバーをモチーフにしたEPSA社のマークが刻印されている。時計によっては刻印がないものもあったようだが、ほとんどのものに採用された。下の写真はコンプレッサーケースを使って1960年代に販売された当時のダイバーズウオッチ。右から、ハミルトン、ウイットナー、エニカ。ほかにもジャガー・ルクルトやロンジンなど有名メーカーも採用する
ケースメーカーのEPSA社が55年に特許を取得したこのコンプレッサーケースは、ケースにかかる水圧を利用して、水深が増すごとに密閉度を高めるというものでした。EPSA社はこれをスイスの各時計メーカーに供給。それによって一番上に掲載した写真(右から、ハミルトン、ウイットナー、エニカ)のように、多くのメーカーから様々なデザインのダイバーズウオッチが登場したことはもちろん、さらに高い防水能力を目指して、独自に開発するメーカーが出てくるなど開発が一気に加速したのでした。つまりこのケースの存在そのものが、ダイバーズウオッチの発展に大きく寄与したと言っても過言ではないのです。
会議などでも使える回転式スケール
当時各社から登場したコンプレッサーケースを使ったダイバーズウオッチにはある共通する特徴がありました。それが今回のモデルにも採用しているダブルリューズ構造です。サブマリーナのようにベゼル上ではなく回転式スケールを風防ガラスの内側に設けたため、外からそれを操作する必要がありました。リューズが2時と4時位置の二つあるのはそのためです。これが言うなればシンボルであり、いまや魅力的な意匠のひとつです。
さて、この回転式のスケールですが、本来はどれだけの時間を潜っていたのか、その経過時間を把握するためのものです。それは経過時間がそのまま酸素ボンベ内の酸素の残量に直結するからです。そのため左回転のみで右には回転しない。なぜならば誤作動で右に回転してしまうと実際の潜水時間より短く表示されてしまうからです。
操作方法はいたって簡単。例えば計測を始める現在時間が上の写真のように10時8分であれば2時位置にある操作ボタン①を使って外周部のスケールを左に回転させ、その上に表示されている▼マークを分針の8分のところに合わせるだけでOK。その▼マークを基準点に分針が進んだぶんが経過時間ということになる。会議などで早めに切り上げたいときに便利なのです。
さて、次回は開発段階について触れたいと思います。
<コンプレダイバー1960>
ケース:316Lステンレススチール、ベルト:イタリア製ヴィンテージ調レザー(換えベルト付属)/ケース径40mm、ケース厚12.7mm /10気圧防水/自動巻き(Cal.MIYOTA9015)/組み立て日本/文字盤はブラック(Ref.YK18001-1)とネイビー(Ref.YK18001-2)の2種類あり/定価各4万8600円(各150本限定)
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