右が愛用のグランドセイコー スプリングドライブ。左のルミノックスは睡眠中につけている。夜中に目覚めたときに、この時計で「あと何時間寝られる」と確認して安心するそうだ(笑)
格闘家やプロレスラーに時計愛好家は多いが、桜庭選手も例に漏れない。ロレックスを筆頭にGショックやプロトレックまで含めると、約20本を所有している。
「時計を好きになる前は、常に気になる存在だったんだけど、なかなかきっかけがなかったんです。その後たまたま時計を手にする機会があって、実際につけてみたらはまっちゃった(笑)。そこから目覚めて集めるようになったんです。一時期はかなりロレックスにはまってましたね」
現在の愛用時計はグランドセイコーだ。
「ロレックスだとどうしても人と被るんですよ。特にデイトナやサブマリーナだと、ヘタすると同じ時計をしている人に1日に3回くらい会う(笑)。ロレックス自体はいい時計だと思うんですが、それがどうしてもイヤだった。GSは実際使ってみるとすごく正確だし優秀。クルマにしても国産が好きで、もっと国産製品を見直そうって気持ちもあります。デザイン的にもシンプルで、黒と白のコントラストで見やすいですね。ブランドのロゴが金色で入っているワンポイントも気に入っています」
さて試合中の選手はどんな時間感覚で過ごしているのだろう?
「試合中は一瞬がすごく長く感じられることがありますね。特に自分が攻められている苦しい時間は長い。相手のパンチが降ってくるときとか、実際は0コンマ数秒のはずが5秒くらいに感じられますよ。事故に遭った瞬間、一瞬で人生が走馬灯のように脳内を駆け巡るっていいますよね。ああいう感じかもしれない(笑)。総合の試合だと最初のラウンドが10分で、2・3ラウンドが各5分ってことが多いですが、最初の5分はセコンドの人にも時間のことは言わないようにお願いしています。5分経過した時点で声をかけてもらって、あとは残り3分・2分・1分を教えてもらう感じです。試合前にはだいたい何分くらいで仕留めてやるってシミュレーションしますが、攻められるときは関係なくどんどんいっちゃいますね。でも基本的にはスタミナの配分を考えながら試合しています。試合中に休んでいることもありますよ。グラウンドでこう着しているときなんか、攻防しているように見えて実はお互い休んで息を整えていたり(笑)。10分間全力で動き続けるっていうのは、どれだけ鍛えても実際は難しい。だから試合中にもうまく休みながら駆け引きしてるんです」
選手の頭のなかにある濃密な時間感覚を想像しながら観戦すると、また違った面白みが生まれてくるだろう。
KAZUSHI SAKURABA 1969年7月14日、秋田県生まれ。高校・大学とレスリング部で活躍し、92年にUWFインターナショナルに入門。96年からは総合格闘技に進出し、PRIDEのリングでホイラー、ヘンゾ、ホイスといった難攻不落だったグレイシー一族の選手を次々撃破。そのため「グレイシーハンター」、あるいは予想外の技を多用して観衆を沸かせる様から「IQレスラー」といった異名を得て、2000年代の格闘技ブームを牽引するトップ選手となる。その後はHERO'S、DREAMなどに参戦し、最近は新日本プロレスを主戦場に活躍中。