左からシチズンのゴールドウオッチ、ピアジェのライムライト、ロレックスのデイデイト。いずれも思い出深い時計たち
歌えて踊れて芝居もできるエンターテイナー、梅沢富美男さん。コレクションのなかから思い出深い3本の時計をご持参いただいた。まずはシチズンの金無垢ウオッチ。これは梅沢さんがブレイクし始めたころに手に入れた品だ。
「82年にTBSの『淋しいのはお前だけじゃない』という連ドラに出演して、それをきっかけに少しずつ皆さんに名前を知られるようになったんです。当時の芸能界には新しいタレントを受け入れる余裕があったことも大きかったけど、数少ないチャンスをものにできたのは、それまで芸を磨いて努力をしてきたからだって自負はありました。そんなときにずっと僕をひいきにしてくださっていた病院の先生が、『頑張ったね。おめでとう』ってことでプレゼントしてくれたんです。いまでもたまにつけますね」
ピアジェの時計はふとした縁がきっかけでいただいたもの。
「広島でディナーショーをやったとき、会場に歩くのがつらそうなおばあさんがいらっしゃったんです。壁伝いに手をつきながら歩いているんですが、そこまでして来てくれるっていうのがうれしくて、手を引いて席まで案内してさしあげたんですよ。その後に広島の会社の社長さんという方から連絡があって、あのおばあさんはその方のお母さんだと言うんです。『芸能人なんてチャラチャラしてると思っていたが、君は自然な態度で母に親切にしてくれた。母もとても喜んでいるよ』ってことで、そのお礼にってことでプレゼントしていただいたんです。下心があったわけじゃないんですが、人に優しく接しているとそういうこともあるんだなって改めて思いました」
ロレックスのデイデイトはご自身で購入したもの。プラチナケースにダイヤがセッティングされた豪奢なモデルだ。
「86年の2月から毎年明治座で座長公演をさせていただいているんですが、その公演が1030回を迎えたときに記念として買ったんです。1030ってのは『トミオ』と掛けて(笑)。明治座といったら俳優にとって最高の晴れ舞台ですが、座長として舞台に立った回数では僕がトップなんです。それで何か記念になるものをと思って買いました。芸能の仕事をしていると、あまり高価な時計をしているとお客さんに嫌みに思われるし、ブレスレットや指輪も極力つけないようにしているんです。ふだんからできるだけ気を付けるようにしているんですが、自分も旅一座から始まってここまで頑張ったんだし時計くらいならいいだろうってことでね」
TOMIO UMEZAWA 1950年11月9日、福島県生まれ。大衆演劇のスターを父に持ち、幼いころから旅一座で過ごす。1980年代には艶やかな女形ぶりから「下町の玉三郎」というニックネームで話題になり、82年にはシングル「夢芝居」が大ヒットを記録。翌年にはNHK「紅白歌合戦」にも出場した。剣劇、歌舞伎やミュージカル風に演出されたステージ、さらに歌謡ショーを織り交ぜた公演は常に超満員。テレビドラマや映画への出演でも人気を博している。昨年には父兄が座長を務めてきた劇団を引き継いで、梅沢富美男劇団を旗揚げした。