芸能人の愛用時計

松尾 貴史 -男の肖像時計の選択(パワーウオッチVol.61)

エルメスのクリッパー クロノグラフとカルティエのルイ カルティエ ラウンド。クラシカルな意匠と落ち着きのある色使いが時計選びのポイントになっているようだ

 

ふだんの姿から非常にファッション感度が高そうに見える松尾さんだが、本人はそれを全否定する。

「実は格好には全然無頓着ですよ。今日持ってきたのはたまたまエルメスとカルティエですが、ブランドにも別に興味はないんです。エルメスの方は10年くらい前に雑誌の取材でミラノに行ったとき、モンテ・ナポレオーネっていうブランドショップが集まっている通りで買いました。エルメスが欲しかったというより、青のトーンが非常に絶妙で心惹かれるものがあったんです。ふだんはあまり時計はしないんですが、このエルメスは比較的よく着けます」

一時期はほとんど時計をしなかったが、最近はまたその重要性を感じているという。その意味合いは実用やファッションを超えたところにあるようだ。

「この仕事を始めてからもしばらくは時計をしていたんですが、どうしても腕に何か巻いている煩わしさが気になるようになっちゃって、そのうちあまりしなくなっちゃいました。時刻を知るためのものと考えると、今はケータイも持っているから必要ないなって思っちゃう。ただ時計はハレの日を演出するものだって考えると、意味合いが変わってきますよね。時計をすることによって、自分の気分が少しだけ高揚するような感覚があります」

とはいえ時計選びは難しい。芸能人なりの悩みもある。

「もう50歳を過ぎたのであまり安っぽい時計もしてられないし、仕事柄他人からチェックされたりもしますしね(笑)。バラエティ番組でタレントが並んでいるところに座ると、それこそ高級外車が買えるような時計をしている共演者もいるわけですよ。そこで張り合うつもりもないですが、中途半端に高い時計を買うのもなんだか変だし、時計って本当に難しいです。時計のことを気にし始めるとキリがないですね」

こだわりがないとはいえデザイン畑出身の松尾さんだけに、こういう時計が欲しいというアイディアは強くあるようだ。

「浅葱や臙脂のような、和の色合いを取り入れた時計があると面白いですね。ラウンドよりは角形の方がいいかもしれないけど、金属の加工を上手にやらないと和の雰囲気を殺してしまいますね。あとはベルトも狩猟民族的な意味合いが強いので、うまくデザインしないと難しい。でもそれがうまくいけば和装にも使えるし、かなり心ときめくものができるんじゃないかな」

 

 

松尾 貴史タレント
TAKASHI MATSUO 1960年5月11日、兵庫県生まれ。アマチュア時代からギャグパフォーマンスで名を馳せ、ディスコDJの見習い時代にスカウトされてタレントの道へ。初期は「キッチュ」の芸名で活動。テレビやラジオ出演のほか、舞台を中心としたパフォーマンス、俳優、ナレーション、文筆など多方面で活動し、マルチタレントとしての地位を確立。また雑学に長け、さまざまな分野に造詣が深いことでも知られており、折り紙やソムリエ、落語などではプロ級の知識と技術を誇る。京都造形芸術大学客員教授も務めている。

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