フランク・ミュラーのなかでも屈指の存在感を放つ、コンキスタドール コルテス キング。「コンキスタドール(征服者)という名前よりも、サイズの『キング』のほうに惚れた(笑)」と渡辺さん
東京・新宿区にある新劇の名門、文学座。渡辺徹さんはここで、俳優としての第一歩を踏み出し、現在も芝居を続けている。
「やっぱり文学座は僕の原点です。故郷のような場所なんですよ。もう30年ぐらい所属していますけど、今でもここに来ると緊張します。稽古のときから、先輩・後輩問わず、ガンガン言われますから。このぐらいの年齢になってくると、ほかにそういう場所ってあんまりないんですよ。昔はドラマや映画の現場でもダメ出しされてたのに、今は誰からも怒られない。バラエティに出演しても、せいぜい苦笑いされるぐらいで(笑)。でも、劇団に来ると普通に怒られる。そうすると、自分は今、何ができるようになっていて、何がまだできないのかが、あらためてよくわかるんですよ」
『やっぱり文学座は僕の原点です。故郷のような場所なんですよ。もう30年ぐらい所属していますけど、今でもここに来ると緊張します』
普段あまり表には見せない新劇俳優としてのこだわり。そこには腕時計への愛着と共通する感覚があると、渡辺さんは言う。
「どちらも僕にとっては、保険のようなものなんです。新劇俳優としての自分がいるから、ほかでバカなことができると僕は思っているんです。もし劇団を辞めたら、イメージを考えて、やらなくなっちゃうんじゃないかな。腕時計にも同じようなことが言えて、自分で納得のいくものを身につけているからこそ、ほかでムリにカッコつけなくて済む。笑われちゃいけない、バカにされちゃいけないと肩肘を張らないでいられる。バカでいられる男って、ステキじゃないですか。芝居や腕時計っていうのは、それを保つためのバランスなんです」
世の中のステキなものには2種類あると思うんです。1つは誰がしてもステキなもの。
もう1つは、誰かしか似合わないもの。で、僕はなるべく後者を選んでいきたい---
そんな渡辺さんが愛用しているのは、フランク・ミュラーのコンキスタドール コルテス。大柄な体格にピッタリのキング・サイズである。
「世の中のステキなものには2種類あると思うんです。1つは誰がしてもステキなもの。もう1つは、誰かしか似合わないもの。で、僕はなるべく後者を選んでいきたい。このモデルを始めて見たとき、もうフィーリングで、これはたぶん誰もが似合うような腕時計じゃないだろうと。その場で即決してました」
つい衝動買いしてしまう癖があるという渡辺さん。家族を困惑させることも珍しくないとか。
「5年前の話ですけど、女房と散歩してる途中に土地を衝動買いしたことがあります(笑)。ほかにも新婚旅行で800万円のピアジェの腕時計を買ったこともありましたね。うちの家族は、もうあきらめてるみたいですよ。女房曰く『衝動買いのケタが違うんで、驚き過ぎてリアクションできない』らしいです」
買い物のスケールも人一倍、大きいようだ。
TORU WATANABE 1961年5月12日生まれ。茨城県出身。1980年、文学座演劇研究所に合格。1981年、ドラマ『太陽にほえろ!』のラガー刑事役として注目を集める。1987年、タレントの榊原郁恵と結婚。俳優、歌手、タレント、司会……と、マルチな才能を発揮する存在として、常に安定した人気を誇る。2009年10月27日~11月23日まで、舞台『ヘンリー六世』(東京・新国立劇場)にヨーク公役として出演。三部9時間に及ぶ大作のなかで、熱い役者魂を見せる。