【上写真】レポシはヨーロッパ貴族にも愛用されている高級ジュエリーブランド。1・5・9時のみインデックスが書かれた文字盤がユニークだ【下写真】普段から愛用しているというタグ・ホイヤー プロフェッショナル 200メートル
レザージャケットにレザーパンツ、足元はバイカーブーツというハードな出で立ちで取材場所に登場した麿赤兒さん。「革は男にとって必要な攻撃と防御の両面を備えている」と語るように、強面なイメージを補強するかのような重厚さだ。しかしその出で立ちに潜む気品は、麿さんの芝居にも通じるところがある。
持参していただいた愛用の時計は2本。1本は超高級ジュエラーとして知られるレポシの時計で、日本ではかなり珍しい逸品。そしてもう1本はタグ・ホイヤーだ。
「このレポシは形見分けにもらったものなんですよ。前に持っていた人は年寄りだったんだけど、ダンディでかっこいい人でね。自分もこの時計はパーティとかちょっと気取った席に出るときにしてます。時刻は読みにくいけど、ちょっと変わっているデザインが気に入ってますね。普段はもっぱらタグ・ホイヤーのほうを使ってます。普段する時計は洗練されていない、ちょっとヤボったいくらいのほうが好きだな。あまりカチッとしたものは好きじゃないんですよ」
このレポシは形見分けにもらったものなんですよ。
前に持っていた人は年寄りだったんだけど、ダンディでかっこいい人でね。
そう語る麿さんは、若い頃から時計が好きだったが、同時に時計に対するコンプレックスも抱えていた。
「時計自体は好きで、中学生くらいの頃から何とか手に入れてしてましたね。東京に出てきてからは、アルバイトで貯めたお金で安い腕時計や懐中時計をよく買ってました。ここだけの話なんだけど、僕は20代の途中まで時計が読めなかったんですよ。短針は理解できるんだけど、長針が5分ずつ刻むっていうのがよくわからなかった(笑)。だから3時だとわかるんだけど、3時15分になるとどうしようもない。普通に覚えられることがちょっとずれてしまったんでしょうね。いい年して時計の読み方なんか聞けないし、あるときに閃いたようにわかるようになりましたけど、それまではひた隠しにしていましたよ(笑)」
親分役をやるときなんかは、普通は金張りの腕時計を使うんだろうけど、
意外に女性用にしちゃうのも面白いんじゃないかとか、ちょっと捻ったりするんです。
航空ファンなのかと尋ねてみるとさにあらず。
今でも店頭で気に入った時計を見かけると、衝動買いしてしまうことも多いという麿さんは、役を演じるうえでもちょっとした時計に対するこだわりがあるという。
「親分役をやるときなんかは、普通は金張りの時計を使うんだろうけど、意外に女性用にしちゃうのも面白いんじゃないかとか、ちょっと捻ったりするんです。普段も時間に関しては神経質ですね。そうはいってもこの世界だと、打ち合わせの席なんか遅れてくるヤツも多いし、その辺は謝り方の妙ですよ。言い訳しながら大泣きするとかね。それも芸のうちみたいなところがあるね」
AKAJI MARO 1943年生まれ。奈良県出身。64年より舞踏家・土方巽に師事。唐十郎との出会いにより「状況劇場」設立に参加。演劇界に大きな変革の嵐を起こす。72年に舞踏集団「大駱駝艦(だいらくだかん)」を旗揚げし、舞踏に大仕掛けを用いたスペクタクル性の強い様式を導入。圧倒的な存在感で舞台、映画、TVなどにも多く出演している。