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第21回 アメリカだけに存在した特別な腕時計2002-09-28
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アメリカの衣装を着た傑作
 先日、以前から念願だった名古屋の近郊にあるトヨタ自動車博物館を訪ねた。昔は高嶺の花だった旧車を見て、性能的には現代の力よりは劣っているだろうが、個性的なデザインに興味があったからである。トヨタ製のみならず、内外の名車を集めた館内は、時の経つのを忘れるほどだった。入場料の1000円は高いかなと思ったが、展示車の保存状態や、ガイドさんが1時間にわたり館内を案内してくれるなど、決して高くはないと思った。ガイドさんに、アメリカのフォード博物館やドイツのベンツ、ポルシェ博物館に行った話をした。なかでもフォード博物館が車だけでなく、汽車や飛行機など乗り物はもとより、懐中時計、電気洗濯機やトースターや電話機など日常生活品まで集めていて見ごたえがあったことを話すと、非常に興味を持ち、是非一度行きたいと話していた。

 20世紀に入ると、アメリカのモノ作りのレベルの高さは他の追従を許さなくなったが、時計に関してはスイスに一歩先行されていた。前回にはアメリカ製の時計がスイス製を激しく追い上げ、肩を並べるまで来たことを書いたが、アメリカ製のほかに、スイス製もムーヴメントのみを輸入し、ケースは正式な許可を受け、アメリカ国内でアメリカ人の好みに合わせて製造された。ベンラスやグルエンなどはスイス製でありながら、ケースがアメリカ製なのでアメリカ製と誤解されやすかった。今回も有名なスイス製でありながらアメリカでケースが製造された時計を取り上げてみたい。










スイス製には勝てない
 グルエン・キャリバー440(1940年代製造)は、文字盤にもカーベックスとあるようにケースとムーヴメントがともにカーブしているグルエンを代表する時計。しかしムーヴメントは初期のものと違い上下の両端部を厚くしているだけである。角穴車にはカーベックスとパテントの刻印がある。角型ケースには角型のムーヴメントを使用するのは当時は当たり前のことだったが、現在では丸型ムーヴメントで代用されるのは残念である。

 ロンジン・キャリバー19・4(1940年代製造)は、見るからに一生モノのムーヴメントと感じ取れる重厚感を漂わせている。三番からガンギ車までの穴石に金属の枠が付いていて高級感が出ている。20数年前に私が機械式時計のコレクションを始めるきっかけとなったキャリバー23Zも、これと同系のムーヴメントであった。

 オメガ・キャリバー342(1950年頃製造)。自社一貫製造の高級時計メーカーのなかで、ローレックスに次いで自動巻きの製造を開始したオメガの最初期の自動巻き。半回転ながら巻き上げ効率がよく、製造上薄型化が可能な一石二鳥のムーヴメントであった。金色の美しいメッキは、以後オメガの特徴のひとつとして人気があった。

 4つ目はルクルト・キャリバーP812(1950年代製造)。ジャガー・ルクルトはジャガーとルクルトの合併以前から、アメリカではルクルトとして名前が定着していたため、合併後もルクルトの名で販売され続けていた。40年代に製造されたキャリバー476を薄型化した第二世代の自動巻きで、半回転式でありながら巻き上げ効率にすぐれていたので、長所の薄型化を生かすためか長期にわたって製造が続けられた。他の有名メーカーが全回転式に移行するなかで、特異な現象であった。これも流行に左右されず独自路線を貫くルクルトの自信の表れかもしれない。

 以上の4本はいずれも金無垢で、ケースにはケースの製造と精度の調整がアメリカで行われたことが刻印され、ムーヴメントには調整済みにもかかわらずアンアジャスティドと刻印されている。これは高い税金を免れるため、未完成のムーヴメントを輸入し、金のケースをアメリカ国内で製造したのである。

 最後はブローバ・キャリバー6BA(1940年代製造)。ブローバはアメリカの会社であるが、コストダウンのため、女性用のムーヴメントはスイスで製造されていたAS社のエボーシュを採用していた。アメリカならではの合理主義の表れである。スイス時計の最大の消費国であったアメリカは、自国の腕時計の高級化を図る一方、スイスと共同で販売価格を抑えるため努力をしていたのである。
※この記事は本誌第6号(2002年9月28日発売)から第30号(2006年9月28日発売)にわたって掲載された人気連載企画です。
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