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第18回 アメリカのトップメーカー・ハミルトン2002-09-28
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スイスに肩を並べる品質
 仕事柄、海外に行くことが多い。旅行好きの私は仕事の合間を利用して観光するのが得意である。有名無名を問わず各地を訪ねてきた。感動した場所もあるしガッカリした場所もある。前者はドイツのノイシュバンシュタイン城やイタリアのピサの斜塔。後者はグランドキャニオンや札幌の時計台である。ノイシュバンシュタイン城とピサの斜塔は団体旅行でも有名で俗っぽいと思いあまり期待していていなかったが、周辺の雰囲気もよく感動した。逆にグランドキャニオンや札幌の時計台は事前の期待が大き過ぎただけに、実物は想像の域よりはるかに小さくてガッカリした。先入観とは恐ろしいもので、グランドキャニオンも予備知識なしで行けば多分感動したと思う。

 腕時計の世界でも、間違った先入観は本質を見失わせる。1930年代から60年代の高級腕時計といえばスイス製で、アメリカ、ドイツ、そして日本製の評価は低かった。日本製は低価格を売り物とした普及品で、スイス製とは同じ土俵に上がっていなかったが、アメリカ製は品質的にはスイス製と肩を並べる高級品であった。アメリカ製の腕時計は大量生産されたため、アンティーク時計としては低価格で取り引きされ先入観から低く評価されがちだが、品質的にはスイス製と同格であった。アメリカにはハミルトン、イリノイ、エルジン、ブローバ、ウォルサムの5大メーカーが存在するが、今回はハミルトンを紹介する。

 コロナード・キャリバー979F(1928年製造)はハミルトンのなかでもパイヒングロックと並ぶ最高級品で、生産個数も少なく幻の時計と呼べる。写真には可動式ケースの可動部分が写っているが、隙間がなく精密で、高級な構造になっているのがわかる。ムーヴメントもスイスではごく一部のメーカーしかできなかった二番車の地板方向に石を使用しているため、パテックより1石多い19となっている。テンプやガンギの受け石はネジではなく、リングごと外す珍しい方式となっている。ハミルトンのなかでも最高レベルのムーヴメントである。

 次はハミルトン・軍用・キャリバー987A(1940年頃製造)。第2次世界大戦中のアメリカやイギリスの軍用時計は、その特殊性から外装はまったく共通で、それに各メーカーが自信のあるムーヴメントを組み込んで軍に納めていた。987Aは前途の979をベースとし、2石減らしてコストダウンをしているが、プレートや歯車が厚く頑丈なうえ、面取りなども非常にきれいに仕上げられている。実用本位の軍用時計とは思えない高級時計である。










アメリカ製時計の頂点へ
 ボルトン・キャリバー982(1940年頃製造)はハミルトンを代表する角形ムーヴメントで、丸形の979と双璧をなす高級ムーヴメントである。石数も19石であり、縦縞のジュネーブストライプに似た模様も美しい。本来は金無垢ケースの高級品に使用され、金張りケースの時計には模様を省略した17石のキャリバー980が使用されるが、ボルトンだけは982が使用される。

 プラチナケースの角形はキャリバー982M(1943年頃製造)。私が過去に見たプラチナケースの紳士用は、このデザインだけである。ムーヴメントの写真にケースが写っているが、プラチナのケースの厚みがあるのがわかる。実は、プラチナは傷付きやすく、もろいので時計のケースには向いていないのだ。ところがスイスとアメリカの頂点に立つパテックとハミルトンは、マイナス面を無視してまでも、トップメーカーであるがゆえにホワイトゴールドの3倍もする高価なプラチナケースを製品化したのだ。

 ターナー・キャリバー754(1954年頃製造)は、自社製の後期の製品である。その頃には人件費の高騰により、ハミルトンもアメリカでの生産が難しくなり、スイス製のエボーシュを採用するようになってきた。名機982の縦方向を少し短くして樽形になったが、ハミルトンの伝統を感じさせる最後の時計である。

 すべての分野で世界一を誇っていたアメリカが、遅れを取っていた腕時計の分野で世界一を目指した1930年代から70年代は、ハミルトンを頂点とするアメリカ時計界が最も華やかな時代であった。1960年代頃からは時計用電池の開発により、ハミルトン電池時計や、ブローバ・アキュトロン(音叉時計)など、クォーツ開発前夜まではアメリカ時計の活躍が続くのであった。
※この記事は本誌第6号(2002年9月28日発売)から第30号(2006年9月28日発売)にわたって掲載された人気連載企画です。
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