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第15回 マニュファクチュール時代のモバード2002-09-28
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実力を競い合った栄光の時代
 モバードは日本ではほとんど知られていないが、1930年代から1960年代の終わりまで、自社一貫生産のマニュファクチュールとして最も多くの機種を作っていた実力あるメーカーである。手巻き式の丸形、角形。自動巻き式では半回転方式、全回転方式。ムーンフェイズ(月齢付き)やクロノグラフまで、当時製造可能な機種をアラームを除いて、すべて製造していた。私が15年前から評価し続けてきたジャガー・ルクルトとともに、マニュファクチュールの双璧を築いている。

 ジャガー・ルクルトはアラームは作っているが、クロノグラフは作っていない。両者を比較した場合、どちらを選ぶかというと、いわれればクロノグラフの複雑さを評価する。したがって私は、モバードこそが最も多く機種を製造した最大のマニュファクチュールだと評価している。モバード製の時計にしばしば刻印されているファクトリーの文字も、設備の整った大工場を連想させ、頼もしい限りである。

 逆に工房で生産していると称しているメーカーは、ほとんどがムーヴメントを購入して自分の名前だけ付けていることが多い。残念ながらモバードも現在はマニュファクチュールではないが、当店がオリジナルクロノグラフを作る際に訪れたラ・ショー・ド・フォンのケース工場が、元はモバードの工場だと聞いたときは過去の栄光がしのばれ感無量であった。

 キャリバー90(1940年代製造)は非常にユニークなクロノグラフである。4時位置のプッシュボタンがスタート・ストップ。2時位置がリセット。積算計に60分形を採用したり、テンプの受けがクロノグラフの構造の下にあるなど、バルジューやレマニアとは異なった構造である。ロンジンと同様に高級時計メーカーが創造したクロノグラフだけに、部品の仕上げは見事。他社のクロノグラフと一線を画している。










完成度の高いムーヴメント
 キャリバー470(1940年代製造)はモバードの代表作である。すべての部品に長年の使用に耐える丈夫そうな素材が使用されている。非常に抽象的ではあるが、修理する者にとっては経験上、素材のよさを感じさせられるのである。材質以外にもブレゲヒゲや切りテンワなど高級時計にふさわしい構造になっている。丸穴車、角穴車ネジはマイナスドライバーではなく、縦横十字の専用ドライバーを使用するモバード独自の構造。

 キャリバー228(1950年代製造)のこのモデルはカレンドマチックと称し、月、日、曜日の3種類のカレンダーに、半回転式自動巻きの構造が加わった複雑時計であった。キャリバー470と異なり、月は手動ではなく、31日から1日にかけて自動的に変化する、当時としては画期的な時計であった。自動巻きの構造は複雑でコストがかかっていた。20年程前にこの時計で初めて半回転式自動巻きを体験したとき、自動巻きローターが動くのが腕に伝わり感動したことを憶えている。

 キャリバー118(1950年代製造)の、カレンダーが窓の中に出る表示方式は意外ではあるが歴史が浅い。日付けだけでなく曜日も窓に表示した時計も数は少なく、スモールセコンド付きだとさらに少なくなる。それほど高価ではないが時計史上珍しいタイプで、コレクションに加えるのに長い年月がかかった時計である。半回転式の構造も228と比べると合理化され、巻き上げ効率もよい。

 キャリバーPHC3019(1967年より製造開始)は、実は伝統的な1930年代から40年代の、最も完成度の高いクロノグラフの構造を唯一受け継いだクロノグラフとして、有名なゼニスのエル・プリメロと同一のムーヴメントである。モバードとゼニスの共同開発ではあるが、主体になっていたのは、自社製の手巻きクロノグラフを作り続けていたモバードであると推定される。モバードの自社生産終了により一時期の中断はあったが、ゼニスにより現在も古き良き時代のクロノグラフは自動巻きを付加され奇跡的に生き残ったのである。

 一般的タイプの時計では地味なメーカーではあるが、クロノグラフやトリプルカレンダーなど特殊な分野では大活躍し、多機種を製造した点ではマニュファクチュールのなかでもナンバーワンのメーカーであった。
※この記事は本誌第6号(2002年9月28日発売)から第30号(2006年9月28日発売)にわたって掲載された人気連載企画です。
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