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第7回 技術者の見た日本の名機セイコーグランドの歴史2002-09-28
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日本の時計技術を高める
 今年の夏は、3カ所で花火大会を見た。7月4日、独立記念日にニューヨークの国連前が第1回。2回目はペリー上陸の地久里浜。3回目は近所の公園から横須賀の花火大会だった。ニューヨークの花火は高い位置で丸く大きく開く、昔ながらの単純なものだが、日本のは色も鮮やかで変化に富んでいる。ただアメリカの花火は4カ所から同時に打ち上げ、数も多くて豪快。花火も国民性で好みが異なるものらしい。

 国によって違いがあるのは腕時計も同様である。自動巻き腕時計が全盛期を迎えた1960年代、時計王国スイスでは時計は一生仕様できるほど耐久性に富み、精度やデザインも突出していた。もちろん価格も高かった。これに対し、日本製は安い価格で精度が高い時計を目指していて、スイスやアメリカを手本として徐々に成長してきた。1970年代にはクォーツ腕時計の大量生産により、世界の頂点を極めることになった。私も3代目の時計店主として、腕時計の大転換のまっただ中を経験することができた。今回は、セイコーのフラッグシップでもあり、最近機械時計ブームにより復活したグランドセイコーを時計技術者として冷静に分析してみたい。

 初代グランドセイコー(キャリバー3180)は1960年から製造され、手巻き25石、厚い金張りで2万5000円は、当時の初任給のちょうど2倍。ムーヴメントはグランドセイコー用として造られたものではなく、セイコーを代表する時計とし数多く生産されていたクラウン(キャリバー1568)にさまざまな高級仕様を施したものだ。クラウンは金メッキの19石が5200円、21石が6200円であった。

 このクラウンをベースに、ケースを厚い金張りにし、裏ぶたにはグランドセイコーのエンブレムも付いている(スイスの高級品を手本にした構造だが残念ながら数年で腐食してしまった)。

 針や文字盤も高級な作りになっている。ムーヴメント全体や、丸穴車、角穴車もきれいに磨かれている。遅れ進みを微調整する装置も付いている。ヒゲゼンマイもヒラヒゲではあるが、巻き上げのヒゲの効果を実現すべく形状を変えたり、片振りの調整もできるように改良されている。石も4石増え、その内の2石はクラウン最大のウイークポイントであったゼンマイ周辺部の摩耗を防ぐため、香箱(ゼンマイの入っている箱)の上下に使用されている。文字盤にはクロノメーターの表示がされていて、出荷時は合格基準を越えてはいたが、公平な第三者機関で行わずに自社内で行ったため、スイスから指摘を受けてしまい、その後クロノメーターの文字は削除された。










クォーツにつながった技術
 初代自動巻きグランドセイコー(キャリバー6245A)は1966年から製造されたが、手巻き装置がない自動巻きでステンレスケース仕様だった。価格は3万5000円。ベースに使用されたムーヴメントは62系と呼ばれ、スポーツマチックファイブが8000円位、それを高級化したマチックで1万2500円、さらに高級化した自動巻きグランドセイコーが3万5000円であった。当初はマチッククロノメーターとして発売されたが、以前から発売されていた手巻きのグランドセイコーの影響もあり、すぐにグランドセイコーに改名された。外装は手巻きと同様にスイス製の高級時計に匹敵する。ケースデザインも従来のセイコーにはないもので、私もいつかは手に入れてたいと思ったほどであった。

 少し残念だったのは、この名デザインが、当時服部時計店が輸入販売していたジラール・ペルゴと瓜二つであることに数年前気付いたことだった。

 ムーヴメントはブリッジに面取り、回転式の遅れ進みを微調整する装置が取り付けられた。ほかにリューズを引くと秒針が止る装置もプラスされた。ゼンマイ周辺の摩耗対策としては、地板と一番受けに石を使用した。石を使用すれば摩耗は防げるが、その反面、強いショックで石が割れることがある。石ではなく摩耗しない良質の金属を使用することが理想的である。石は35石(曜日付きは39石)で、マチックと比べると9石多く、高級と思われるかもしれないが、効果があるのは前途の2石だけで、その他はカレンダーの回転板の下にあり、飾りであった。当時64石や100石等、石の多いほうが高級品といわれ、百害あって一利なしお競争が行われた。

 いまや実力以上の評価があるグランドセイコーについて述べ、辛口になってしまったかもしれないが、過去を知る時計屋、また技術者として冷静に述べたつもりだ。金属の材質面では及ばないものの、外装部品ではスイスの中級品を越えたグランドセイコーは、スイス製と日本・ドイツ製の間にあった厚い壁をはじめて乗り越えた意欲的な時計であった。そして10年後、クォーツによってスイスの高級機械式時計に壊滅的な打撃を与えるとは、誰もが予想しなかったことである。
※この記事は本誌第6号(2002年9月28日発売)から第30号(2006年9月28日発売)にわたって掲載された人気連載企画です。
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