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第4回 バルジューが傑作と呼ばれる理由2002-09-28
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ムーヴメントで選ぶ
 今回も、前回(第8号)に引き続き、バルジューのムーヴメントについての話をさせていただく。

 前回の終わりのところで、「ローレックス」にも搭載されていたキャリバー72Cについて触れ、同じキャリバー72Cを搭載したクロノグラフが15分の1の価格で買えるのだから、そちらをおすすめすると述べた。

 キャリバー730(写真・ワァックマン・1960年代)がその証明で、前述の72Cとは、テンプの振動数とチラネジの廃止以外は、ほとんど違いがない。

 730の振動数は6振動/秒だが、72Cは5振動/秒である。多くの読者はご存知だと思うが、振動数はテンプが振動する回数のことで、往復の回数ではない。毎秒6振動であればテンプは3往復し、その間にガンギの歯を6枚送るのである。振動数についての表示は、一般的には1時間での振動数を示すことが多く、その場合には21600振動/時ということになる。

 72Cは、730の6振動/秒の原型で、5振動/秒である。つまり、1秒間にテンプが2・5往復し、ガンギの歯を5枚送る。振動数が高いほど精度の向上につながるが、5振動と6振動での優劣はまったく気にする必要がない。

 毎秒8振動(28800振動/時)以上をハイビート(高振動)と呼び、外からの力の影響も受けにくくなり精度も向上する。その反面、材質が悪いと摩耗も早まる。

 また、チラネジ付きのテンプはコストがかかるものの、天芯交換の際にバランスを取るのに必要だった。しかし、耐震装置が発明されてからは天芯交換がほとんど必要なくなったので、廃止されるようになった。730で廃止されたことに問題はない。

 730のワァックマンは21万5000円である、クロノグラフを買う場合、メーカー名にとらわれなければ、いかに安い買い物ができるかおわかりになるだろう。

 キャリバー724(写真・エニカ・1960年代・未使用品)はキャリバー72に24時間針を追加し、ベゼル上に表示された24時間の目盛を時差分だけ回転させ、現在自分がいる国と、他の1カ国の時刻を同時に知ることができる。

 このタイプは、バルジューが高級クロノグラフの製造を中止する直前に製造された珍しい時計である。その便利さから、もしデイトナにこのタイプが使用されていたらいったい価格はいくらになったのか見当もつかない。よきにつけ悪しきにつけ、ローレックスと比較されるのも過去のローレックスがいかに偉大であったかの証明かも知れない。








時計史に残る傑作
 キャリバー69(写真・ギャレット・1949年製)はムーヴメントの直径23.4ミリ、ケースが26.4ミリである。クロノグラフの最大の魅力が、これだけ複雑な構造を、これ程小さな空間に押し込められたかにある。その当時、人類が作り得たもっとも精密で小さなメカの1つであると言っていいだろう。キャリバー69はユニバーサルのキャリバー289(ユニバーサルブランドの時計の多くに使用されている)と共に最小のクロノグラフとして時計史に残るであろう。

 精密な時計をこれほどまでに小さくするため、数百年を費やしているのを思うとき、最近の腕時計がすべて大型化(ケースのみ)されてしまうのは非常に残念である。

 キャリバー88(写真・アルフレッド・ロシャー・新品)は、バルジューのなかで最も多機能な最上級の時計である。ユニバーサル・トリプルコンパックスと同じ機能(月、日、曜日のトリプルカレンダーとムーンフェイズ)を有する複雑さのゆえ、製造数は少なかった。デッドストックとして残っていた物を、欠品していた部品を復元するなどアルフレッド・ロシャーが大幅に手を加え、新品として復活させた。同じ物が同社を通じて他社に供給され、そのメーカー名を冠して数社から販売されている。

 アルフレッド・ロシャーは表には出ない影の存在で、流通経路が1つカットされているため、価格はかなり安くなっている。このような、腕時計がピークを迎えた1930年代~1960年代のムーヴメントが発見されることは、非常にまれである。組み立てと調整は非常に難しく、スイスでの調達が不十分なまま出荷されることが多い。再調整が必要で、その度にこのような複雑時計を修理調整する人が世界的に不足していて、技術者の養成の必要性を痛感する。

 今回は、視点を変えて、メーカー名よりも、中身のムーヴメントのキャリバー・ナンバーを第1に解説した。クロノグラフはメーカー名にとらわれるより、ムーヴメントにこだわることをおすすめしたい。
※この記事は本誌第6号(2002年9月28日発売)から第30号(2006年9月28日発売)にわたって掲載された人気連載企画です。
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