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第3回 バルジューが傑作と呼ばれる理由2002-09-28
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腕時計の価格と中身
 ここ5~6年、私の新年はニューイヤーコンサートを聴く事でスタートする。ニューイヤーコンサートといっても1月1日にウィーンフィルが、楽友協会で演奏するのとは違う。1月4日、ウィーン交響楽団ヨハンシュトラウスアンサンブル12名がよこすか芸術劇場で演奏するのだ。ウィーンフィルとウィーン交響楽団とは名前は似ているが別物である。しかし初心者の私には区別が付かない。

 ニューイヤーコンサートでアンコールの最後に演奏される「ラデッキー行進曲」の余韻が醒めないまま、軽やかで元気な足取りでバラの咲くヴェルニー公園を通り、家路に着く。よこすか芸術劇場はあまり有名ではないが、10年前に完成した五層の馬蹄型バルコニーで1800名収容の日本最大の本格派オペラ座である。

 なぜこれ程立派なオペラ座が横須賀にあるのか信じられないであろうが、それは設計の段階で、日本を代表する作曲家のひとり、故團伊玖磨氏が加わっていたからである。東京にもオペラシティというホールがあるが、オペラ座とは別物の、単なる一般的なホールに過ぎない。実質的には、よりオペラ座に近いよこすか芸術劇場が、名前だけのオペラシティに敗けているのである。横須賀を愛する私にとって非常に残念なことであり、機会あるごとに訴えていこうと思っている。

 時計の世界でも同じことがいえる。名前だけ有名で、中身のムーヴメントが価格と正比例しない時計が多くなった。1960年代までは、スイスの高級時計メーカーは自社一貫生産(マニュファクチュール)が当たり前で、ムーヴメントが優勝で耐用年数も長かったので高額であった。

 ただし、クロノグラフだけは構造が複雑で需要も多くないため、自社一貫生産はユニバーサル、ロンジン、モバード、ミネルバ、エクセルシャーパークなど、ごく一部だった。大半はヴィーナス、バルジュー、レマニア、ランデロンなどからムーヴメントを供給され、ケースや文字盤を自社の仕様にして販売していた。

 今回は上はパテック・フィリップ、「ローレックス」から、下は無名の時計会社に至るまで最も多くのメーカーに採用されたバルジュー(英語読みではバルジャックス)を紹介したい。






バルジューの傑作
 バルジューの最も基本形といえるキャリバー23は、キャリバー22の後継として開発された。文字盤の3時方向に30分積算計、9時方向に小秒針を配置した2つのインダイヤルを有することから、続に2つ目と呼ばれるタイプである。基本構造はそのままに、部品を追加して12時間積算計を6時方向に取り付けたのが、3つ目のキャリバー72。これに月、日、曜日を表示したタイプがキャリバー72Cとなる。さらに月齢(ムーンフェイズ)を追加したタイプが、バルジューのフラッグシップ的存在といえる最も複雑なキャリバー88である。

 キャリバー23(写真はアルフレッド・ロシャーの新品)は、パテック・フィリップを筆頭に、ブローバや有名でないメーカーにまで多数採用されている。ここで紹介したアルフレッド・ロシャーのスケルトン仕様は、すでに製造中止となったキャリバー23のデッドストックを見つけ出し、メインプレート(地板)やブリッジ(受)の大部分を、手作業で丹念に削り取った芸術品といもいえる逸品である。

 アルフレッド・ロシャーはスイスでも超高級時計の生産地として有名なジュウ渓谷にある会社で、既成のムーヴメントに加工を加え、独自の時計を作り上げている。マニュファクチュールあ全滅状態にあるスイスにおいて、将来もよいムーヴメントの腕時計を作り続けるためにも、絶対に必要な会社の1つである。有名な高額(高級ではない)時計も、この会社で製造されているのだ。

 話は通常のキャリバー23に戻るが、パテック・フィリップはクロノグラフの90%以上に、キャリバー23を採用している。もちろん、四番車の出車にブリッジ、ウィルピラーの上に押えを追加したり、テンプ付近をパテック仕様に改良はしている。

 キャリバー72C(写真はローレックス・1950年代製造)は、ムーヴメントにローレックス独自の仕様を加えることなく、オイスターケースに納められ、ローレックスから販売された。キャリバー72にローレックス独自の仕様を加えたデイトナ以前に、ごく短期間のみに製造された大変貴重な時計である。希少性とブランド名のゆえに、オークションでは信じられない価格で落札されている。

 確かに防水のオイスターケースと、ROLEXの文字は魅力的ではあるが……。同じキャリバー72Cを使用した時計が15分の1で買えるのだから、私は当然、そちらをおすすめする。
※この記事は本誌第6号(2002年9月28日発売)から第30号(2006年9月28日発売)にわたって掲載された人気連載企画です。
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