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第1回 スイス腕時計が全盛を誇った頃2002-09-28
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20世紀を見た時計店
 創業1901年の小さな時計店の3代目として、幼い頃から時計に囲まれて生活してきた。そのせいか、仕事をしている父親に「何ていう名前の時計が一番すごいの」などといつも質問していたことを憶えている。

 店を継いでから36年。店主、1級時計修理技能士としてのほかに、20年前くらいからはアンティーク時計のコレクター、世界各国へ買い付けに出かけるバイヤー、さらに時計の研究家として「五足のわらじ」を履くことになった。コレクターであるがゆえに時計の、特にムーヴメントを見極めるのは当然のことであるが、そこは永年の経験の賜というか、容易なことだった。

 そうした経験談をもとに、今回からムーヴメントに関する連載を始めることになった。

 時計を修理する者にとって、キャリバーナンバーと称するムーヴメントの型式番号は、修理の際に時計の部品を探すために必要不可欠である。日本の時計はシチズン、セイコーともに、すべてマニュファクチュールと呼ばれる自社一貫生産だった。だが、スイス製はエタブリシューと呼ばれ、ムーヴメント、ケース、針など、それぞれが専門の会社で別々に製造されていた。それらを組み立て、各ブランドの製品とするメーカーが大部分であった。たとえばラドーのゴールデンホース(商品名)のゼンマイ切れが修理に来ると、「ラドーのゼンマイ」ではなく「キャリバーASの何番のゼンマイ」と注文しなくてはいけなかった。








少ない自社ブランド
 1960年代の全盛期を例にとると、時計王国として君臨してきたスイス時計でも、インターナショナル(IWC)、ジャガー・ルクルト、ユニバーサル、ローレックス(私はロレックスといわない)、オメガ、ロンジンなどの高級時計はマニファクチュールであったが、ユリスナルダン、ラドー、テクノス、エニカなどの中級時計はエタブリシューであった。

 これはけっして恥ずべきことではなく、ムーヴメント、針、ゼンマイなどの分業化は、懐中時計時代から続いた伝統であり、それが耐久性のある高品質の製造を可能にし、スイスを時計王国の位置に押し上げたのである。

 現在は合理化が進み、ムーヴメント製造はほぼETA(エタ社)に集約されてしまったが、1960年代には自動巻きが得意だったASのほか、FHF、Fなど、ムーヴメント製造会社が数多く存在していた。

 特殊で、生産量の少ないクロノグラフはさらにこの傾向が強く、バルジュー、ヴィーナス、レマニアなどのムーヴメントを使用したものが、パテック・フィリップ、ロレックス、オメガ、ブライトリング、ホイヤーなどのブランド名で販売されていた。

 クロノグラフのマニュファクチュールは、ユニバーサル、ロンジン、モバード、ミネルバなどほんの少数であった。エクセルシャーパーク、アンジェラスはその中間で、自社ブランド製造と、他社への供給の両方を行っていた。  今から30年ほど前は、スイス時計は高額であり、当店のような小さな時計店は修理といっても国産時計が主だった。ごく一部の、大きな時計店の修理職人のみがスイス時計に触れられた。

 当店は幸いなことに、横須賀アメリカ海軍基地の時計修理のため、終戦直後から在籍した依田章臣氏の影響で、日本では目にすることもできなかった、スイスやアメリカ時計のムーヴメントに関する知識を身に付けることができた。「バルジューのキャリバー72という、すばらしい機械がローレックスにも使われてるんだよ」という依田氏のコメントが、20年近く前に草分け的な時計雑誌に載ったときは、スクープとして一大センセーションを巻き起こしたことが懐かしい。

 現在は常識となったエタブリシューの存在も、昔はあまりおおっぴらにはできなかったのである。
※この記事は本誌第6号(2002年9月28日発売)から第30号(2006年9月28日発売)にわたって掲載された人気連載企画です。
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